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2010年9月24日

そもそも『学習指導要領』とは?

文部科学省が「どの教科でどんな内容を」「どの学年でどのように学習するか
という基準を定めたのが『学習指導要領』です。

これは全国どこの学校で教育を受けても同じ教育水準を確保するために必要なもの
社会や子どもたちの将来への展望を踏まえて、およそ10年ごとに改訂されてきました。

学習指導要領の変化~つめこみ教育の見直しからゆとり教育へ

教科書に大きな影響を与える『学習指導要領』ですが、ここ30年で次のような変化がみられました。

1980年度実施
 ・・・それまでのつめこみ教育への反省から、戦後初めて教育内容が削減されました。
1992年度実施
 ・・・教育内容はさらに削減。生徒の個性を重視した指導が行われるようになりました。
2002年度実施
 ・・・「ゆとり」を重視し、教育内容はさらに厳選・削減されました。
   完全週5日制の実施や、総合的な学習の時間の新設など。

1980年度に学習指導要領が改訂されるまでは、
たくさんの知識を身につけるつめこみ教育が行われていました。
地名や年号、漢字や数式を覚える、いわゆる"暗記型"です。
しかし暗記が得意、授業内容をスムーズに理解できる子どもたちばかりとは限りません。

授業についていけない子どもたちは"落ちこぼれ"と呼ばれるようになり、
それが原因で勉強に興味が持てなかったり、学校へ行くのが苦痛になるなど
つめこみ教育は、大きな社会問題にもなりました。

そこで教育内容の量が見直され2002年度には「ゆとり教育」がスタート。
まだ記憶に新しい「ゆとり教育」ですが、これはただ教育内容を減らすことが
目的ではなく、ひとつひとつの事柄をじっくりと理解して、基礎学力を
しっかりと身につけるということが目的でした。

教育内容が軽減され、時間的にも余裕が持てるはずの「ゆとり教育」ですが、
実施されるにしたがって子どもたちの学力低下が問題になってきました。
その原因は何だったのでしょう?
それは子どもたちひとりひとりの"やる気"の違いです。

すべての子どもたちが、じっくりと勉強に取り組み、
理解を深めることで新たに学ぶ意欲を持つことができたなら
「ゆとり教育」に警鐘が鳴らされることはなかった
でしょう。

しかしやる気=積極的に学ぼうとする意欲が湧かなければ
"ただ教育内容が減っただけ"で「ゆとり教育」本来の目的は果たされないことになってしまいます。

これらを踏まえて小学校の『学習指導要領』が平成23年度改訂されました。

平成23年度からの『学習指導要領』と教科書の変化

平成23年度実施の『学習指導要領』の基本方針は次のようになっています。

1.「生きる力」をはぐくむことがよりいっそう重視されます。
生きる力とは、知・徳・体のバランスのとれた力
つまり、確かな学力と豊かな心、健やかな体の調和と規定されています。

2.授業時数が増加します。
「ゆとり」でも「つめこみ」でもなく『基礎的な知識・技能の習得』と
『思考力・判断力・表現力の育成』 の両方をバランスよくのばしていくため
授業時数を増やして教育内容を改善します。

3.言語活動や理数教育、外国語教育、伝統や文化に関する教育、
   道徳教育などを充実させます。

これをふまえ小学校の教科書はこう変わりました。

1.ページ数が増えました。
それ以前の教科書に比べて約25%ページ数が増えました。
これは学習内容が増えたこと反復学習のページが増えたことによるものです。

2.「言語の力」が重視されました。
ただ丸暗記するのではなく、筋道をたてて説明したり、
考えている意見を言い合ったりする内容が増えました。 

3.伝統や文化に関する記述が増えました。
国語の5年生で古文や漢文が登場したり、
社会の6年生で国宝や重要文化財に関する歴史学習が充実するなど、
日本固有の伝統や文化を理解、興味が持てる内容で展開されました。

その他、カラーユニバーサルデザイン(色の区別がつきにくくても使いやすい)に対応していたり、
大判サイズや文字の大きな教科書も用意されていたりと工夫がこらされるようになりました。

平成27年度、教科書はどう変わる?

平成23年の改訂から、さらに次のような変化があります。

1.ページ数がさらに増えます。
9教科の教科書の平均ページ数は、平成23年度版教科書に比べて約9%増加しています。

2.振り返り学習、調べ学習、言語活動の充実。
考察の手順や、ノートの取り方などが丁寧に記述されています。 

3.「発展的な学習内容」の継続。
学習指導要領に示されていない「発展的な学習内容」は、同程度継続して盛り込まれています。

4.最新の社会情勢
東日本大震災関係(自然災害、防災など)の記述が大幅増加しています。社会科では竹島、尖閣諸島に関する記述も。

» 教科別!教科書改訂について

脳トレ(雑感)

脳トレ以前、同じ時期にある新聞と雑誌で似たような記事を目にしました。
 新聞は「ゲームをしている時より、計算をしている時の脳の動きが勝っている」、雑誌は「百マス計算をするより、思考的な問題を解いている方が脳を鍛えられる」という内容でした。

 昨今、実に「脳」ブームで、関連商品も巷にあふれています。しかし、私は、何か特別なものを使わなくても生活の中で様々な脳開発できることが多いと思っています。

 私の塾で勉強の計画を立てる場合など、計画うんぬんの前に「料理をさせるように」と親御さんに助言することが多くあります。

 料理するには様々な力が必要とされます。

 まず、食材の購入過程で、季節感や産地、漢字、形・色など食材に関する様々な知識を得ます。かつて、ある中学入試で魚を答えさせるのに「魚のイラスト」で選択させたものがありました。切り身しか知らない現代の子どもには難問だったことを思い出します。

 また、調理する上で、食材を切る場合はいく通りも方法があり、切った切り口や切ったものの形状を、想像し、覚えることで空間的な事柄や想像力を養うこともできます。

 そして、調味料の多い少ない、あるいは、調味料のあわせ方でどんな味になるかなどは、推測と実証の勉強にもってこいですし、五感も鍛えられます。

 最後の食器の片付けや洗い方では、工夫をすることで作業効率を考えることができ、段取り力も身に付くはずです。

 このように、料理だけでも結構な脳トレ(勉強)ができます。
 低年齢のうちに、家事を手伝うことも大切な脳開発だと思うのです。

<おまけ>「計算が遅くて・・・」などの悩みを解消するには、生活面の動作(着がえ、片付けなど)のスピードも上げないと無理でしょう。すべては「脳」がコントロールしていますから。

(2008.01.16)あまのじゃく


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